日本のヒップホップ会で最も影響力を持つ者のひとりであるZeebra氏と
ミクスチャーロックバンドDragon AshのKjこと降谷建志氏。
二人の間には深い確執があるという話をよく耳にしますが
今回はその真相と現在について解明していきたいと思います。
最初はZeebraもKjを認めていた?
まず、Kjが所属しているDragon Ashのジャンルである
ミクスチャーロックバンドというものが何であるかというと、
「様々なジャンルの音楽とロックを混ぜ合わせた」バンド、特に「黒人音楽(ラップ、ヒップホップ、レゲエ)または民族音楽を混ぜ合わせたロック」バンドとしての意味をもって使われる。
と定義されています。
ロックのサウンドをベースに、ヒップホップのリズムやラップを織り交ぜているんですね。
Kjは自身のバンドの楽曲の作詞・作曲の多くを担当しており、曲のアレンジやリミックスの才能を発揮していました。
そういった彼の音楽性に好感を持ったZeebraが自身の楽曲のリミックスをKjに依頼したことと、もともとKjがZeebraを尊敬していたことがきっかけで、ふたりの関係が始まりました。
その後も、今度はKjが自身の曲「Greatful Days」への客演をZeebraが受け、それからも交流が深まっていくのかと思いきや、その辺りから段々と暗雲が立ち込めていったのです。
ZeebraがKjをディスるようになったきっかけの曲とは?
「Greatful Days」にかかわった時から、自分の曲に似ている点が多いことに疑問を持っていたZeebraですが、ある曲をきっかけにその怒りが爆発してしまったと言われています。
その曲が、Dragon Ashが2000年夏にリリースした「Summer Tribe」。
この曲の後から、ZeebraはKjをディスるようになりました。
ちなみに「ディスる」というのは「disrespect」という英単語からきているという説があり、「敬意を欠くこと、無礼、失礼、不敬」を意味します。そこから派生して、相手のことをバカにしたり、けなしたりすることを「ディスる」というようになったと言われています。
ちなみに、
disrespectでなく、後に続く言葉を打ち消す「dis」(日本語で「不」や「非」を意味する)という単語からの由来ではないかとも言われています。なお、英語だと「dis」よりも「diss」という綴りが使われています
という説もありますが、本題ではないのでこの辺で止めておきましょう。
さて、その問題の「Summer Tribe」。これがZeebraの「真っ昼間」に酷似していたのです。
曲の雰囲気だけでなく、声や歌詞、動きまでもがそっくり。これにはZeebra本人だけでなく、同じ業界のほかのラッパーやファンからも指摘があったこと。
この頃から幾つかの曲の中で、暗にKjをディスっていたZeebraですが、2002年にリリースされたアルバム「最終兵器」の中に収められている『公開処刑』という曲の中で、遂に名指しでKjを痛烈過ぎるほどに批判したのです。
それを受けたKjは、その後に控えていたシングルとアルバムのリリースを取りやめたそう。事の重大さを受け止め、真摯に対応していくことを決意したとか。
このことが、いい意味でも悪い意味でもKjの音楽の転換期となったのでした。
その後の彼の曲からはヒップホップ色が拭い去られ、のちにZeebraに「オリジナリティーがあって良い」と言われるようにまで変貌を遂げたのです。
このことに関しては、ファンの中でも賛否両論だとは思いますが、Kjのその後の人生に大きな影響を与えたのは間違いないでしょう。
その後のZeebraとKjは和解したのか、現在の関係は?
では、その後のふたりの関係はどうなったのでしょうか?
2008年出版のZeebraの自伝「HIP HOP LOVE」にKjに対する思いが綴られていました。
「その後の彼らの活動のスタンス、いいんじゃないかなって思ってる。…(略)…こっちにはわだかまりは一切ない。もう終わったことだと思っている。…(略)…和解してもいいのかなって思う。」
この自伝によると、Zeebraは、自分の音楽が純粋なヒップホップではないのにもかかわらず、「これがヒップホップだ!」と世間に思わせるような活動をしたり、サンプリングやオマージュを超えた模倣を繰り返したりと、あまりにも目に余る状況が続いたために、最後の行動に出たということでした。
その後Kjの音楽性に変化を感じたZeebraは、過去の確執を洗い流そうと決意している様子。
一方で、Kjはというと、同年に発売された音楽雑誌にて、
「Grateful Daysはやらなきゃよかったと思ってる」
「人を傷つけるような曲は(俺なら)かけない」
と言っているのをきくと、Kjのほうには和解する意思はないようにも思えます。
ただ、実際に面と向かって「やめろ、お前のやってることは違う。」と指摘することもできたかもしれないのに、曲を通して伝えたということは、Kjをミクスチャーロック(Zeebraの言うオルタナティブヒップホップ)アーティストとして認めていたからなんじゃないかとも思います。お前の可能性は単なる真似事では終わらない、その先へ行ってほしい・・・そんなZeebraの願いが込められているようにも取れました。ただ、ラッパーのディスは表現がきつく、その鋭いリリック(歌詞)に心をえぐられて深い傷を負ってしまうのはわかります。。。しかも、相手は尊敬していた人物なら尚更です。
ラッパー同士のラップのケンカとも言われるディス。
本来なら実力派同士のディスり合いはファンからするとヒップホップの魅力のひとつなのですが、それがふたりのアーティストの確執の原因になってしまったのは非常に残念です。
個人的には、ヒップホップでのディスは「相手をいかに貶めるか」ではないと思っています。
「自分がいかに的を得ていて機知に富んでいてしかもセンスがいいか」を、ラップという手段で相手とお客さんに知らしめる行為だと考えています。
限られたバースの中で、ライムを踏みながら相手を皮肉ったり自分を主張したりする。
だから、素晴らしいラッパーのディスを聞いた後は、嫌な気持ちではなく「おーー!すげー!!」という賞賛の気持ちが湧いてくるのです。でないとただの子どもじみた悪口大会に成り下がりますからね。
Zeebraのディスをどう捉えるかは個々の問題だと思いますが、
Kjにとってはいまもまだ封印していたい過去のようです。
まとめ
現在はDragon Ashと並行してソロでの活動もしているKjこと降谷建志氏。
そしてKGDR(キングギドラ)のメンバーとして、DJとして幅広く活躍しているZeebra氏。
ふたりの確執は10年以上も前に起こったものですが、いまだ正式な和解には至っていません。
Kj次第という印象は受けますが、負った傷は相当深そうです。
勝手な予想としては、この先ふたりが交わることはしばらくないのでは・・・と思います。
ふたりの関係が今後どうなるかはわかりませんが、それぞれの活躍に期待しています。
最後まで読んでいただいてありがとうございました。